ブランド13cmから発売された『好き好き大好き!』が名作だったので考察。原作を入手するのは少々大変ですが2014年03月28日発売のメガストアに付録として収録されています。また、Android版が安価で入手可能です。
ネタバレを含むので未プレイの方はスルー推奨。
ゴムについて
作中、主人公が蒲乃菜に着せるゴムのスーツをラバースーツと呼びます。ゴム=ラバー(rubber)と恋人=ラバー(lover)とが掛詞になっています。その証拠に恋人を暗示しているラバースーツは、みるくがいくら頼んでも主人公は蒲乃菜にしか着せません。また、作中の記述からゴムは主人公にとって性の象徴でもあります。これはゴムからコンドームを連想すれば分かると思います。
工場について
作中、工場は主人公の心そのものだとする記述があります。工場の造りは地下室、1階、2階となっていますが2階は過去(幼少期)、1階は現在、地下室は心の奥底(下心)をそれぞれ表しています。そのため蒲乃菜とみるくは2階には入れません。また、屋上に上る展開がありますがこれはエンドへの伏線で死を示しています(幼少期より前は生まれる前、つまり死)。
ヒロインと各エンドについて
蒲乃菜
主人公によって誘拐、監禁された少女。作品構成からの立ち位置は自分(主人公)が愛する(初恋の)少女。作中、唯一ハッピーエンドがあるキャラクター。これは恋というものが自分(主人公)が愛した人間に愛されることでしか報われない事を示しています。彼女のハッピーエンドと呼べるものは2つありますが、ポイントはラバースーツを着たまま迎えるハッピーエンドは1つもないという事。これはラバースーツに拘束具が取り付けられている事からも分かりますが、ラバースーツというものは主人公の心における一方的な恋人の形骸であり、相手を彼氏・彼女などの関係に縛り付けるだけのそれは本当の恋愛ではないということ。彼女のエンドの中でラバースーツを自分から受け入れるものがありますがこのエンドはハッピーエンドではなくバッドエンド。これは恋愛に発展したわけではなく、ただの愛欲に溺れただけの愛の形を示しています。そのため、行為の描写がアナルセックスしかありません。
みるく
主人公を慕う少女。作中での立ち位置は自分(主人公)を愛してくれる(自分は好きでない)少女。また、蒲乃菜から見た主人公は主人公から見たみるくに近い構図。1つとしてハッピーエンドと呼べるものはありません。なぜなら主人公は彼女の事を好きではなく、相思相愛でなければ恋人とはなれないため。主人公が彼女の部屋に監禁されるエンドがありますが、あれは主人公が蒲乃菜を監禁したのと全く一緒です。
莉果
作中での立ち位置は過去に自分(主人公)を好きだった女性。当然、過去の好意は意味を成しません。主人公の現在の恋愛に関係する蒲乃菜、みるくが処女なのに対して莉果、瑠香が非処女なのは恐らく恋愛の対象として埒外ということか。
瑠香
莉果の事を愛する女性。彼女と莉果の迎える結末から、同性どうしの恋愛が成り立たないことを示しています。
ゆかり
心理学を学んでいる女性。それゆえ彼女は勝手に工場の中(主人公の心の中)を見て、蒲乃菜を見つけ出します。彼女が主人公の工場に忍び込むエンドは、余計な干渉をしてくる母親を表している可能性大(児童心理学という単語に注目すれば)。また、大学の研究室はゆかりの心の象徴(そのため母性を象徴する水槽が置かれている)。ゆかりの研究室は「大学の中でも一番奥まった棟の五階」にあるが、これは主人公の心の象徴である工場と高低差を出すことで精神年齢や人生経験の違いを表しているのか。
テーマについて
テーマは狂気でも純愛でもなく恋愛。タイトルの『好き好き大好き!』はそれをシンプルに表したもの。余談ですが、キャッチコピーの「ボクハゴムガスキダ」は言ってしまえば「僕は恋人が好きです」に狂気を彩ったもの。
細かい所は他にもあるでしょうがおおまかな考察は以上。